カナダの生活情報や医療事情

カナダの基礎知識

名称 カナダ 日本国(ご参考)
面積 998.5万㎢ 37万8,000㎢
人口 約3,515万人 1億2,659万人
首都 オタワ 東京(人口1,383.2万人)
通貨
(2018年6月)
カナダドル
(1加ドル=83.35円)

(1米ドル=約110.54円)
時差 -12.5~-17時間(6つの時間帯に分れる)
-11.5~-16時間(サマータイム)
言語 英語、仏語が公用語 アルタイ語系の日本語
民族 イギリス系、フランス系、ドイツ系、イタリア系、中国系、先住民族 アジア人種の日本民族・朝鮮人・中国人・北海道に少数のアイヌ人
宗教 ローマン・カトリック(国民の約半分近く) 仏教・神道・キリスト教
気候 高緯度に位置するため、国土の大部分は冷帯および寒帯である。アラスカ海流(暖流)の影響で太平洋岸はヨーロッパ型の温帯気候で、冬季の平均気温が氷点下になることはなく、降雨も平均している。東部海岸および内陸部は夏季と冬季の気温の差が激しい大陸性の気候となる。 南部は温帯気候、北部は冷帯気候。モンスーンの影響が強く、6~8月は南東モンスーンにより多量の雨がもたらされる。11~3月は大陸からの北西モンスーンにより、北部は厳しい寒さとなり、日本海に面した地域には多量の雪が降る。
代表的な
都市の気温
バンクーバー:
3℃(1月)
18.5℃(7月)
トロント:
-4.5℃(1月)
21.5℃(7月)
(最低気温/最高気温)
東京:
0℃/9℃(1月)
22℃/29℃(7月)
(最低気温/最高気温)
電化製品
電圧:
120/240V
プラグタイプ:
A、BF
電圧:
100V
プラグタイプ:
A
在留邦人数 70,025人(2017年10月現在)

出国・入国するときの注意事項

下記は2018年6月現在の情報です。最新情報については、外務省・在日カナダ大使館等のウェブサイトを参照してください。

査証(ビザ)

日本とカナダとの間には、就学、就職、生業または報酬を受ける活動に従事する場合を除き、3か月以内の滞在については、査証免除取極がありますが、カナダ側の一方的措置として、6か月以内の滞在であれば査証は必要ありません。日本とカナダとの間にワーキング・ホリデー制度があります。この制度を利用する場合、日本国またはカナダ国内でワーキング・ホリデー査証を取得する必要があります。

2016年3月15日以降、上記の査証免除取極に基づき航空機にてカナダへ入国(トランジットも含む)する際、米国の電子渡航認証システム(ESTA)と同様、事前にパスポート情報等を登録しオンライン認証を受けることを義務付ける電子渡航認証(Electronic Travel Authorization:eTA)の導入が開始されました。(永住者カードの所持者を除く。また陸路、海路からのカナダ入国は対象外。2015年8月1日以前に就労許可、就学許可の発給を受けている方が、カナダから出国し空路で再入国することを予定している場合は、eTAが必要です。)

認証申請は、カナダ政府専用ウェブサイトから行う必要があります。なお、2016年11月10日以降、eTAを取得していない旅行者は、カナダ行きの航空機に搭乗できなくなりましたので、必ずeTAを取得してください。また、日本・カナダの二重国籍者はeTAの申請ができません。旅行の際は必ずカナダの旅券を携行してください。

  • 認証費用として1件に付き7カナダドルが必要となります(クレジットカード決済)。入力する内容は、カナダ入国に際して提出する入国申告カードとほぼ同じで、氏名・生年月日・性別・住所連絡先などの申請者情報、パスポート情報、渡航目的のほか、いくつかの質問事項に対し、「はい」、「いいえ」での回答形式となっています。(入力自体は英語もしくは仏語となりますが、日本語による申請方法案内があります。)
  • 一度認証を受けると有効期間は5年間となります。ただし、5年以内にパスポートの有効期限が切れる場合は、同期限までが有効期間となり、また、パスポート切り替え等によりパスポート番号が変わった場合には、新たに認証申請を行う必要があります。

出入国審査

入国審査の際、十分な旅費、滞在費を所持しない者、有効なパスポート、帰国の航空券を持っていない者、以前にカナダから強制退去させられた者、犯罪者、入国審査時に不正確な申告を行った者等は、入国を拒否されることがあります。入国が許可されるとパスポートに入国印が押され、滞在期限日が記入されます。期限日の記入のない場合は6か月まで有効となります。もし、入国印が押されなかった場合には、入国後最寄りの移民局で事情を説明して、パスポートに入国印を受けておくことが必要です。

米国と日本の間には査証免除プログラム(90日以内の商用・観光の目的で米国に入国する場合は一定の条件の下で査証を必要としない)がありますが、米国に滞在していた人が一時的にカナダに入国した後、米国に再入国しようとした際にトラブルになるケースが増えています。米国出国前に、現在所持している米国の滞在許可で、米国に再入国できるかどうかについて、移民局等で確認しておく必要があります。
また、通常、観光でカナダに滞在していた者が、ビジター査証(査証免除による入国許可)が切れる前(通常は6か月になる前)に一度、米国に出国し、米国での観光を終えてカナダに再入国しても、カナダでのビジターとしての滞在期間は、その再入国日から新たに6か月認められるということではなく、初回のカナダへの入国日から起算して6か月とされる点に注意してください。

なお、在カナダ米国大使館や総領事館では、カナダに長期滞在している人以外からは、原則として米国入国査証の申請は受け付けていませんので、カナダから米国に渡航する予定がある場合は、日本を出発する前に在日米国大使館または総領事館で必要な査証を申請してください。米国は日本も含む査証免除国からの入国者に対し、パスポート情報等の事前登録を求める電子渡航認証システム(ESTA)を導入しています(ただし、陸上移動により米加間を往復する人や、別途米国入国査証を取得した人については、ESTA登録の必要はありません)。米国への渡航を予定している方は、早めにより登録をされることをお勧めいたします。

具体的な注意事項

  • 観光目的で短期間カナダに滞在した後、米国を経由して帰国する場合は、一般的にESTAの登録(航空機利用の場合)、日本行きの航空券の所持および米国滞在中の費用の証明が求められる。
  • カナダに滞在中の人は、カナダの滞在期限が立証できる資料(永住権、就学許可、就労許可、ワーキング・ホリデー査証等)により米国への入国が許可される。
  • 査証免除プログラムで米国に入国し、いったんカナダへ出国した後、米国へ再入国(トランジットを含む)する際には、最初に米国へ入国した日から90日以上経過している場合は再入国が認められない。
  • 永住、就労、留学等の資格で米国に滞在している場合で、米国からカナダへ一時出国後再入国するには滞在資格を証明するもの(例えば、学生の場合は留学許可書「I-20」)を提示しないと入国が認められないことがある。
  • 米国での留学が終了し、日本への帰国前にカナダを観光しようとして、帰国用航空券、荷物等を米国内に残したままカナダに入国した場合、カナダ観光後に、荷物を引き取るために米国に再入国しようとしても、米国における学生としての滞在が既に終了しているので、所持している学生は査証では再入国が認められない(学校修了後のグレースピリオド(帰国猶予期間)は米国内のみ旅行可)。この場合、帰国用航空券を所持していないため米国との間の査証免除プログラムを利用できず、一度日本に帰国しなければ、米国に入国できないことになる。

詳細な査証情報を知りたい方は、在日カナダ大使館(電話:03-5412-6200)、または在日米国大使館(電話:03-3224-5000)にお問い合わせください。

外貨申告

合計して1万カナダドル相当以上の現金、小切手やトラベラーズチェック等を含む有価証券を持ち込む場合は、入国時に申告する必要があります。

通関

すべての旅行者はカナダ入国に際し、税関申告書によりカナダ国境業務庁(Canada Border Services Agency、以下CBSA)係官へ申告しなければなりません。申告に虚偽が認められた場合、それらが没収、罰金または刑事訴追されることがあるので注意が必要です。

主な輸入禁止品/輸入制限品

  • 麻薬、火器・武器、絶滅危惧種の動植物などの持ち込みは禁止されている。
  • 通常の肉類・肉製品・乳製品、青果・ナッツ類などの農水産物や、通常の昆虫・鳥類、花・樹木、種子などの動植物・同製品、並びにサンプル商品・器材など商業目的物品の一部には、規制・制限がかかる場合がある。

税関に申告を要する主な持込品

  • 持病などで医薬品類を一定量以上持ち込もうとする場合は、日本からの書類が必要となる場合があります。詳しくは、Health Canada(ヘルス・カナダ)ウェブサイトの個人使用医薬品持込み欄などにてご確認ください。
  • 下記の免税範囲を超える贈答品/海外で購入または受領した製品/酒/タバコ
  • 高価なパソコンなどの電子機器、装飾品

主な免税品枠・金額

免税範囲60カナダドルを超える物品を持ち込んで課税される場合、カナダに入国したその州の関係法令が適用となります。短期観光・滞在者(カナダに観光・商用目的等で短期滞在する個人)の免税範囲は次のとおりです。

  • 酒:ワイン1.5リットル、またはそれ以外の酒1.14リットル、ビールは355ml缶なら24缶、もしくは8.5リットル相当量
  • タバコ:紙巻きタバコ200本、葉巻タバコ50本、刻みタバコ200gまで
  • 州ごとの飲酒・喫煙が許される法定年齢に達していること。
    タバコ:全州で18歳以上。
    酒類:アルバータ、マニトバ、ケベック州は18歳、その他の州は19歳。
  • 「CANADA DUTY PAID/DROIT ACQUITTE」と表示されていないタバコ製品には、特別関税が課せられる。

カナダ居住者(カナダ永住者、再び定住する目的で戻ってきた元カナダ永住者、居留許可を持った長期滞在者)については、カナダを離れていた期間により、以下のとおりとなります。
陸路で入国の際、税関申告書の記入が不必要な場合が多いものの、CBSA入国管理官に対する携行品の申告は必要です。

24時間以上
  • 200カナダドルを超えない物品
  • 酒、タバコは免税対象外
48時間以上
  • 800カナダドルを超えない物品
  • 同免税枠に酒、タバコを含める(上記の免税範囲内)
7日間以上
  • 800カナダドルを超えない物品
  • 酒・タバコ、物品類は入国時に携行している必要はなく、別送が可能
  • 同免税枠に酒、タバコを含める(上記の免税範囲内)

なお、以上の案内はごく一般的なものとなっております。詳細な内容等はCBSAのウェブサイトにてご確認ください。

現地に到着したら

在留届

旅券法第16条により、外国に住所または居所を定めて3か月以上滞在する日本人は、住所または居所を管轄する日本の大使館または総領事館(在外公館)に「在留届」を提出するよう義務付けられています。住所等が決まりましたら、必要事項を記入の上、速やかに最寄りの在外公館へ提出してください(世帯ごとに届出をすることもできます)。
提出はFAXまたは郵送、インターネットで可能です。提出にあたっては、「在留届」用紙の注意事項をよく読んで提出してください。

  • 住所その他届出事項の変更およびカナダを去る(一時的な旅行を除く)ときはその旨の届出(変更および帰国届)を行ってください。

在留届の提出義務のない3か月未満の短期渡航者(海外旅行者・出張者など)についても、現地での滞在予定を登録できるシステムとして、2014年7月より外務省海外旅行登録「たびレジ」の運用を開始しています。登録者は、滞在先の最新の海外安全情報や緊急事態発生時の連絡メール、また、いざというときの緊急連絡などの受け取りが可能です。

注意が必要な生活環境

各種取締法規

写真撮影

教会では宗教上の理由から建物内部の写真撮影を遠慮するように求められることがあります。軍の施設(基地等)、連邦政府建物内等および先住民保護地区等の撮影は許可が必要です。

麻薬

ヘロイン、コカイン、マリファナ、LSD等すべての麻薬について、日本と同様に使用、所持、携行が禁止されています。最近、カナダでは麻薬犯罪が急増し、治安当局も取締りに神経をとがらせており、不定期に疑わしい場所等に対する立入検査を行っています。旅行者が麻薬を所持していた場合、官憲に身柄を拘束された上、不正売買を行っていれば、平均7年以上の懲役刑に処せられます。売買の事実が証明されない場合でも、6か月以上の懲役(初犯の場合)、または罰金刑、またはその併科の処罰となります。
入国時の検査も厳しく、入念であり、時には麻薬犬も使用されています。

就労許可

カナダで働くためには、永住権の所持者あるいはワーキング・ホリデー査証の所持者以外は、雇用許可証(Employment Authorization)をあらかじめ取得しておく必要があります。
不法就労者はかなりの数に上るため、カナダ政府もその実態を正確に把握できない状況になっていますが疑わしいレストラン、会社への立入検査も常に行われており、発覚した場合には国外退去処分となり、その後も最低1年間は査証が発行されなくなります。

日本とカナダの間には、ワーキング・ホリデー制度がありますので、同制度を利用すると最長1年間、働きながら旅費の不足分を補いつつ、カナダ国内を旅行することができます。

売買春

買売春は誘う方も誘われる方も処罰の対象となります。

飲酒

屋外の公共の場所での飲酒は禁止されています。

喫煙

政府関係機関や、屋内、地下鉄の駅など、公共の場所では禁煙です。

子の連れ去り

近年、国際結婚が増えてきていますが、その一方で、結婚生活で困難に直面したそれぞれ国籍の異なる父または母のいずれかが、国際的なルールや居住地の法律をよく理解せず、また顧みることなく、もう一方の親の同意なしに子どもを居留地から連れて出国しようとし、問題になるケースも発生しています。カナダに居住する子どもを日本に連れて帰るにあたり、以下に関連して疑問がある場合には、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

実子誘拐罪の適用

カナダや米国の国内法では、父母のいずれもが親権または監護権を有する場合、または離婚後も子どもの親権を共同で保有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れて出国する行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされ、14歳未満の子の連れ去りの場合、10年以下の禁錮刑等が刑法で規定されています。例えば、カナダに住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子どもを日本へ一方的に連れて帰ることは、例え実の親であってもカナダ刑法に違反することとなり、カナダに戻って来た際に犯罪被疑者として逮捕される場合が想定されますし、実際に逮捕されたケースが発生しています。ICPO(国際刑事警察機構)を通じて誘拐犯として国際手配される事案も発生しています。

ハーグ条約

カナダは、国境を越えて不法に連れ去られた子の返還の仕組み等を定める「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」の締約国です。一方の親の監護権を侵害する形で子どもを常居所地国であるハーグ条約締約国から他のハーグ条約締約国へ連れ去りまたは留置した場合は、原則的に子が元の常居所地国に返還されることとなります。

未成年の子どものパスポート申請

未成年の子どもの日本国旅券の発給申請については、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面の「法定代理人署名」欄への署名により手続を行っています。ただし、旅券申請に際し、もう一方の親権者から子どもの旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじめ在外公館または都道府県旅券事務所に対してなされている場合、旅券の発給は、当該申請が両親の合意によるものとなったことが確認されてからとなります。その確認のため、在外公館では、子どもの旅券申請についてあらかじめ不同意の意思表示を行っていた側の親権者に対し、同人が不同意の取り下げ申請に同意する旨を明記し自署した「旅券申請同意書」の提出をお願いしています。さらに在カナダ日本国大使館および総領事館では、未成年の子の旅券申請の際には、他方の親権者の不同意の意思表示がない場合であっても、旅券申請に関する両親権者の同意の有無について口頭で確認しています。

家庭問題に関する相談はお早めに関係団体・機関へ

カナダには、家庭内での問題、暴力・虐待に対する人権の面からの対応を行っている団体および機関があります。家庭内の問題の兆候が見え始めたら、速やかに各種団体・機関等、または在外公館までに相談するようお勧めします。

その他

家の賃貸契約時の留意点

アパート契約書には英語および仏語の2か国語で書かれている定型フォームが使われることが多いようですが、追加条件が別紙に書かれていることがありますので、必ず内容を理解した上で契約することが必要です。なお、サブレット(いわゆる「また貸し」)を利用する場合は、契約書を作成しないことが多く、退出時のトラブルが多数起こっています。契約前に賃貸規約をよく確かめることは必要不可欠です。
なお、契約して家賃を前納したところ、見せてもらった部屋は契約者とは関わり合いのない他人の部屋で、前納した家賃を騙しとられたという被害も発生しています。

語学学校選択にあたっての留意点

日本で語学学校のパンフレットを入手し、入学金、授業料を先に払い込み、学校に来てみたら授業レベルや授業数が思っていたものと異なっていたというトラブルが発生しています。多額の前納金を支払う場合は、慎重に内容について確認することが必要です。学校を選ぶ際は、できるだけ、その学校で授業を受けたことのある人から情報を入手するとよいでしょう。

雇用契約にあたっての留意点

ワーキング・ホリデー関係者や就労査証所持者が、雇用契約にあたって、契約書を取り交わさず不当な労働をさせられていたり、契約条件をよく理解せず働いていたためトラブルに巻き込まれたといった事例が多発しています。また、移民申請のホストになることを条件に不当な労働を強いる雇用者もいます。雇用契約を締結する際には契約条件についてよく理解することはもとより、州ごとに労働基準法(Employment Standard Act)が制定されており、労働基準局が雇用関係の監督にあたっていますので、契約トラブルに備え法律内容を把握すること、トラブルになった際には労働基準局等に速やかに相談することが重要です。

風俗・習慣・国民性

  • 相手を訪問する、医者の診察を受ける等に際しては、必ず事前にアポイントメントを取り付けるのが一般的です。
  • 観光地や大型デパート、スーパーマーケットは日曜日でも営業しているところがありますが、地方では日曜日に閉店となる商店が多くあります。
  • ケベック州は人口の8割以上がフランス系で、州の公用語はフランス語とされ、また、カトリック教徒が宗教人口の圧倒的多数を占める等、カナダの他の州と比べ異なった特色がみられます。
  • カナダの夏季には、レジャー・スポーツが盛んに行われますが、湖水地における初心者の単独でのカヌー遊びには転覆の危険があり、過去には死亡例もあります。また、ナイアガラ流域観光における一種のアドベンチャー・クルーズは危険性が高い(激しい横揺れ、上下動等のための打撲傷により入院した例もある)ので、注意が必要です。
  • バンフおよびジャスパー国立公園ではクマ、ヤマネコ、オオシカ等と出会うことがありますが、襲われたり、場合によっては生命に危険が及ぶ怪我を負わされる可能性もありますので、絶対に近づいてはいけません。また、餌を与えることは法律で禁止されています。加えて、同国立公園内の動植物、土、石等を持ち出すことも禁止されています。
  • カナディアンロッキーの山々を登山やハイキングする際は、怪我や遭難の場合に備え、Park Warden Officeに登録しておくようお勧めします。

健康・医療

カナダ(バンクーバー) 医療事情
(ジェイアイ傷害火災調べ 2016年8月時点)

項目 内容 日本(ご参考)
救急車の料金
①公営:
42,300円
②民営:
通常利用しない
無料
通常利用しない
初診料 11,200円~12,000円 2,820円
病院部屋代
(1日当たり)
①個室:
297,300円
②ICU:
788,900円
30,000円~100,000円
80,000円~100,000円
虫垂炎手術の治療費
①総費用:
812,500円
②平均入院日数:
2日
600,000円
4日間
骨折時の治療費
(橈骨末端閉鎖性骨折)
79,400円 20,000円
ファミリードクター制度 あり
  • 緊急時を除き、(歯科等一部を除き)全科診察可能な医師の診察を受け、その後必要に応じ専門医へ紹介
なし
  • 初診から専門医の受診が可能(ただし、総合病院等で紹介状が必要な場合あり)
乳児死亡率
(1,000人当たり)
5人 2人
平均寿命 82歳 84歳
協力:Trans Med Consulting Services Ltd. 聖路加国際病院
注意事項
  • 全体
    • 海外では自由診療となるため、治療費は受診する医療機関や治療内容等によって大きく異なります。一覧は目安として下さい。
    • 日本人旅行者が利用することが多い私立の医療機関を中心に調査しているため、その国一般の相場と異なる場合があります。
  • 項目別
    • 1.
      公営の救急車は原則行き先を指定できません。距離加算の記載がない場合は、原則同一市内の料金となります。
    • 2.
      初診時の最短時間(通常10~20分程度)の診察料となります。別途医療通訳費が必要な場合があります。
    • 3.
      部屋の使用料のみとなり、実際に入院する際には、その他に医師の診察料、薬剤費等が必要となります。
    • 4.
      腹膜炎を併発していない手術を想定しており、術式等は医療機関により異なります。
    • 5.
      転倒し、手をついた際に骨折しやすい箇所となります。レントゲン検査、固定処置を行い1回のみの外来診療を想定しています。
      (帰国後に継続治療を行うことを想定していますが、その治療費は含んでおりません)
    • 6.
      当該国の一般的な医療制度を記載しており、医療機関や緊急度合い等により記載と異なる場合があります。
    • 7.
      出典:世界子供白書2015<要約版>-日本ユニセフ協会
    • 8.
      出典:総務省統計局発行、総務省統計研修所編集「世界の統計2016」
  • 日本の医療事情
    • 詳細金額は医療機関の設備や治療内容等により異なりますが、概ねの理解をいただく目的で、一般的な料金を記載しています。
    • 治療費は、海外と比較する目的で健康保険利用の基準である1点10円かつ全額(10割)自己負担として算出しています。健康保険を利用し受診した場合の自己負担額は通常記載よりも低額となります。また、日本で健康保険を利用しない自由診療の場合は、医療機関により点数換算が異なります。
過去に発生した保険請求事故実例(カナダ)
  • 意識が朦朧として立つことができず救急車で搬送。脳幹梗塞・肺炎と診断され42日間入院。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送。
    治療・救援費用 保険金支払額:
    70,810,000円
  • 階段を踏み外して転倒。大腿骨頸部骨折と診断され16日間入院・手術。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。
    治療・救援費用 保険金支払額:
    7,883,121円

医療事情

首都オタワは北緯45度23分に位置し、北海道の稚内市の北に相当します。夏は短く、冬の寒さは厳しいですが(-30℃以下になることもあります)、四季があり、湿度が低いため冬以外は過ごしやすい気候です。

カナダの医療制度はメディケアと呼ばれる国民皆保険制度を採用しており、原則として患者の自己負担が一切なく、すべてを税財源で公的に負担しています。すべての国民は皆保険を取得できますが、移民の場合取得まで3か月間、また留学生(ワーキング・ホリデーを含む)等は公的医療保険を取得できない州もあり、その場合、医療費は有料になります。また、歯科診療・処方薬剤(入院中は無料)・リハビリ治療などは全額個人負担となります。高額な医療費請求に備えて、渡航前には海外旅行傷害保険に加入しておくことをお勧めします。

カナダ医療事情で最大の問題点は医療機関へのアクセスの悪さ、待ち時間の長さにあります。一般に医療機関を利用する場合には、まず地域の家庭医を受診する必要があります。しかし家庭医は、実数が少なく、また患者数を制限することが許されているため、新規の患者を受け付けていない場合があります。運良く家庭医を持てた場合でも、医師は基本的に保険医であり診療報酬に上限が設けられているため、1日の診察人数を制限している場合も多く、予約が1~2週間後ということもあります。また、専門医については家庭医の紹介なくしては受診できないシステムになっていますが、極端に医師数の少ない科(整形外科、皮膚科、産婦人科など)では、数か月後から1年先にしか予約がとれない状況です。また、医療費抑制政策により、CTやMRIなどの検査機器の数が日本に比べて極端に少なく、検査の待ち時間も何か月も先という状況です。

家庭医を持っていない患者が受診できるのはウォークインクリニック(注:ショッピングモールや街中にある簡易診療施設)ですが、常に混雑しており、オタワ市内の場合、数時間待ちが平均です。また、ウォークインクリニックには、レントゲン検査機器、簡易血液検査機器、超音波検査機器などの基本設備を設置していないところがほとんどです。

ウォークインクリニックの時間外・週末・重症の場合は総合病院(公立)の救急外来(ER)を受診することになりますが、これもまた待ち時間が長い状況です。ERでの待ち時間については州の保健省のホームページなどで公開されています。ERにおいては患者のトリアージ(ふるい分け)がトレーニングされた看護師によって行われており、命に関わる疾患については早めに治療が開始されますが、緊急性が無いと判断された疾患については後回しにするというシステムが徹底されています。

このような弊害を少なくするため、民間医療機関(プライベートクリニック、検査機関等)が一部の州で解禁されています。カナダの国民保険を有しない人々や、待ち時間を短縮したい富裕層にとって民間医療機関は有用であり、利用者が増えています。こうした施設では自己負担での医療が制限付きで(入院設備は伴わない等)行われていますが、施設数はまだ少ないのが現状です。

注意を要する病気

特にかかりやすい病気や風土病はありませんが、以下の注意が必要です。

狂犬病(Rabies)

コウモリ、タヌキ、キツネなどの野生の哺乳類と接触することにより感染するウイルス疾患です。一般的な潜伏期間は1~2か月で、発熱・頭痛・感冒症状などで始まり脳炎を引き起こします。発症後の致死率100%の疾患です。仕事上あるいは冒険家など動物に接触する可能性がある場合は、渡航前の狂犬病ワクチン接種をご検討ください。

ハンタウイルス肺症候群(Hantavirus pulmonary syndrome)

アルバータ州を中心とした西部地域で発生しています。シカ(ディア)マウスが媒介するウイルス疾患です。発熱・両側性間質性肺炎を起こし、潜伏期は1~5週間です。上記マウスやネズミの乾燥した糞・尿・唾液を吸い込むことにより感染しますので、接触を避けることが予防です。

ウエストナイル熱(West Nile fever)

イエ蚊が媒介し発熱・脳炎を起こすウイルス性疾患です。潜伏期間は3~15日で、多くは不顕性感染(感染しても無症状)ですが、発症した場合には、発熱、頭痛、背部痛、皮疹などが生じ1週間程度で回復します。重傷化した場合には高熱、昏睡、震え、筋力低下などの脳炎症状が出現します。治療法はなくワクチンもありませんので、蚊に刺されないように注意することが必要です。30~50%のDEETか、7%か15%のPicardin含有の昆虫忌避剤を塗布して予防を行ってください。ノミやダニのいる地域に行く場合には、長袖のシャツを着て、長ズボンの裾は靴下の中に入れ、ブーツを着用し、皮膚の露出を避けましょう。

ライム病(Lyme disease)

野山に生息するマダニが媒介する細菌(スピロヘーター)感染症です。症状は数日から数週間の潜伏期の後、発熱、筋肉痛、関節痛、遊走性紅斑と呼ばれる湿疹、神経症状などです。重傷化すると神経症状が長引くこともあります。抗菌剤で治療可能ですが、ダニに刺されないよう野山に出る場合は30~50%のDEETか、7%か15%のPicardin含有の昆虫忌避剤を塗布して予防を行ってください。長袖のシャツを着て、長ズボンの裾は靴下の中に入れ、ブーツを着用し、皮膚の露出を避けましょう。

アタマジラミ(Head lice)

秋から初冬にかけ幼稚園、小中学校で、シラミ(特に頭)が発生しやすくなります。学校によっては、「Head lice guidelines for school」というお知らせを出すところがあり、シラミが見つかった場合、治療をして、シラミがいなくなるまで学校を休ませなければなりません。子どもには、帽子や櫛などを共有しない、頭のかゆみなどの初期の症状に気を付け、家族や他の生徒にうつさないなどの注意を促す必要があります。薬局でシラミを殺すための櫛付のシャンプーが多種売られています。薬品を使わずにオリーブオイルや酢を使う方法などもあります。

ツタウルシ(Poison Ivy)

北アメリカの東部から中部に広く分布しています。明るい森林や灌木帯、荒れ地などに生え、公園や家の裏庭にも見られます。他の樹木などに気根を出して這い登り、高さは15メートルほどになります。接触したり、その毒がついた道具などを触ったりした場合に、ひどいかゆみと発疹、水泡などの皮膚炎をおこします。接触したらすぐ水で洗い流してください。薬局で塗り薬も買えますが、症状がひどいときは病院に行くことをお勧めします。ハイキングや庭仕事をするときは、なるべく肌を露出しないような服装をお勧めします。

予防接種

成人、小児ともの必要とされる予防接種は特にありませんが、渡航後に予防接種をする場合は、州により接種スケジュールが異なるので、居住地のスケジュールを確認してください。また、麻疹、おたふく風邪、風疹の単独ワクチンはほとんど流通しておらず、MMR混合ワクチンになります。

小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

入学・入園時には法律で以下の予防接種が必要とされています。
ジフテリア(Diphtheria)、破傷風(Tetanus)、百日咳(Pertussis)、ポリオ(Polio)、インフルエンザ菌B型(Hib)、麻疹(Measles)、おたふく風邪(Mumps)、風疹(Rubella)、水痘(Varicella)、髄膜炎菌性髄膜炎CおよびACWY(Meningococcal Conjugate)

健康上、心掛けること

冬の寒さ対策は重要です。外出する際は、帽子・耳当て・マフラー等を着用し、可能な限り皮膚の露出を防いでください。
4月初旬まで雪が降り、気温が下がることがあります。冬は路面が凍結し、滑りやすい状況ですので、転倒しないようブーツを着用し、歩行に注意しましょう。車の場合、冬用タイヤを着用していても横滑りを起こし事故につながるケースが後を絶ちませんので、車間距離を十分にとって安全運転を心掛けましょう。車での外出の際にエンジントラブルを起こし長時間家屋の無い郊外で立ち往生してしまうことがあります。車に乗る際には薄着になりがちですので、車内には必ず毛布などの防寒具を装備して、もしもの場合に備えましょう。冬季は、空気の乾燥が著しく、鼻咽頭を痛めがちになりますので、室内では加湿器を使用しましょう。

春先は、日本とは異なるアレルゲンが存在し、花粉症が発生しますので、持病をお持ちの方はマスクの着用、事前の抗アレルギー薬の服用などの対策が必要になります。

夏は、紫外線対策が必要になります。帽子やサングラスを着用しましょう。大自然に恵まれていますので、野山などにハイキング・登山などに出かける機会も多くありますが、蚊・ダニ・ノミなどに刺されないように、虫除け対策を行ってください。

カナダでは1年を通じて様々なスポーツを楽しめます。大自然に抱かれて空気と水、食べ物のおいしいカナダでスポーツに親しみ、健康な体を作ってください。

カルガリー

湖や川の水はきれいであっても飲まないでください。アルバータ州は海抜1,000メートル以上のところもあり、日中と夜間の気温の差が激しいので、夏といえどもコート、ジャケットまたは厚手のセーターが必要です。

トロント

トロント市は、オンタリオ湖の北側に面し、北海道の旭川市の緯度にほぼ等しい北緯43度67分に位置しており(日本との時差は冬期:-14時間、夏期:-13時間)、冬が長く、春と秋の期間が短い気候です。朝と晩の寒暖の差が激しく、極寒期には-20℃を下回ることもあります。積雪は年により大きな差があって一概には言えませんが、豪雪となることはあまりありません。しかし、4月に入っても雪が降ることもあるうえ、冬期、春先にかけては、路面が凍結しているため、滑らない靴を履く等の注意が必要です。

バンクーバー

バンクーバーでは、カナダの東部や内陸部に比べ気候は温暖で、冬季でも気温が零下になる日は少ないですが、1年を通じて雨の天気が多くあります。特に冬期は雨や雪が続き、気が滅入りがちとなり、うつ状態になることもあるので、メンタルヘルスケアに注意することが必要です。水道水は衛生上問題のある地区もあるので、飲用は避け、ミネラルウォーターの飲用をお勧めします。

モントリオール

冬が長く、厳冬期には-30℃に達する日もあります。大雪で除雪が停滞すると渋滞が発生し路面凍結によるブレーキ事故も多くなりますので気をつける必要があります。また、冬季は空気が乾燥しています。

海外⽣活不適応について

気候、⽣活習慣、⾷事、治安状況、⼈種、宗教、⾔葉の違いは、適応に相当な努⼒を要します。うまくいかないと不適応症候群となり、精神⾯のみならず胃腸系や循環器系に変調をきたします。きまじめなタイプや完全主義者に陥りやすい傾向があります。適応には時間がかかること、誰でも⼀度は通る道であることを認識してあせらないことが肝⼼です。疲れたときは無理せず、⼗分な休養、時には⻑期休暇が必要です。
特に家族で赴任されている⽅はご家族のメンタルヘルスにも気を配ってあげて、できるだけ不満や愚痴を聞いてあげるようにしてください。

交通事情

一般的な交通事情

カナダでは、基本的に高速道路は無料で利用できる上、都心部を除けば交通量はあまり多くありません。そのため、高速道路には制限速度が定められているものの、制限速度をオーバーして走行している車両が多く見受けられます。また、日本と比べて車間距離を短く取ってくる車両が多いことも特徴で、追突事故等が頻繁に発生しています。車を運転する際には、一般の道路、高速道路ともに、スピード超過に注意し、十分な車間距離の確保を心掛けてください。

安全運転を心掛けることはもちろんですが、万一の事故に備え、必ず自動車保険に加入してください。また、交通事故、車両故障の事態に備え、緊急サービスCAA(Canada Automobile Association)に入会しておくことも有用です。

運転免許証について

カナダの運転免許は、州政府の管轄になっています。短期の滞在の場合は、国際免許証と日本の免許証を携帯のうえ、運転してください。国際免許証は各州の定める期間の範囲内で有効です。

交通事故について

自動車の運転は、日本に比べて交通量が少ないこともあり、スピードを出しがちで、違反や衝突等の事故が多発しています。運転する場合等には、行き先の道路交通事情をあらかじめ十分調べた上で、安全運転を心掛け、十分に注意することが必要です。

冬季には路面凍結による交通事故が多発します。また、広大なスキー場で道に迷い遭難した例や、雪崩に巻き込まれるといった事故も発生しているので、雪山スキーに出かける際は万全の注意が必要です。なお、飲酒運転に対しては厳しい罰則があります。
なお、ケベック州では、毎年12月15日から3月15日まで冬タイヤ(スタッドレス・タイヤ)の着用が義務づけられています。また、ケベック州の一部(モントリオール島内)は、赤信号の際の右折を禁止していますので、標識に注意してください。

車を運転する場合の注意事項

ケベック州は、カナダ国内でも交通量が多い上、運転が乱暴な傾向が見受けられます。周囲の車に気を遣わない人が多いので注意してください。方向指示器なしでの急な車線変更、無謀な割り込み、追い越し等々、一歩間違えば大事故となるような運転をしているドライバーが多く、また、歩行者や自転車が赤信号で横断をすることも日常茶飯事です。豪雪地域であるが故に道路事情も悪く、冬季になると道路に穴や亀裂がいたる場所で生じます。

冬期の冬用タイヤ装着について、州ごとに規則が異なっております。いずれにせよ、冬期の雪道等を走行する際には十分注意し、いつも以上に車間距離を取る、早めにブレーキをかける、急ブレーキ・急ハンドルを避けるなど、安全運転に心掛けてください。

安全に暮らすために

治安情勢(外務省海外安全ホームページより)

下記は2018年6月現在の状況です。外務省海外安全ホームページ等を活用し、常に最新の状況を確認するようにしましょう。また、滞在中は常に治安情勢の変化に気を配り、新聞、テレビ、現地人等の情報にも注意してください。

最新情報

現在、カナダへの渡航・滞在についてのスポット情報、危険情報は出ていませんが、外務省海外安全ホームページを参照のうえ、安全対策に心掛けてください。

テロについて

概況

カナダでは、2014年10月、ケベック州において兵士を車でひいて殺害したテロ事件、オタワ市中心部において兵士をライフル銃で射殺したテロ事件が連続して発生しました。これら2つの事件の直前には、ISILが、米国、カナダ等の「連合」による攻撃を批判し、世界のイスラム教徒に対して、対ISIL連合諸国の国民を攻撃するよう扇動する声明を発出し、カナダ治安当局はテロ警戒レベルを「低程度」から「中程度」へ引き上げていました。

2017年10月17日、シリア民主軍がISILの本拠地ラッカの解放宣言を行いましたが、イラクおよびシリアにおけるISILの敗退に伴い、外国人戦闘員の母国への帰還や拡散にどのように対処するかが、カナダを含む西側諸国の課題となっています。現在イラク、シリアを含む海外でテロ活動に従事していると疑われカナダと関係のある者が190人強おり、この他に60人強の外国人戦闘員がカナダに帰還したことが確認されています。テロ関連活動に参加する目的で海外渡航した者が、帰国後にテロを引き起こすことが懸念されており、カナダ治安当局は彼らの帰国後の動向を警戒しています。

各組織の活動状況

現在カナダでは、テロ組織からの指示や支援を受けないものの、そのようなテロ組織のウェブサイト上の情報に接した個人が、過激化してテロを引き起こすケース(いわゆる「ローンウルフ(一匹狼)型テロ」)が発生しており、このようなテロに対する危機感が高まっています。

2016年8月には、オンタリオ州在住の人物が自家製の起爆装置を用いて企てたテロを加連邦警察が未然に阻止したとの事案がありました。

2017年1月29日、フランス系カナダ人の男が、ケベック市内所在のイスラム文化センターに侵入し、礼拝中の人々に向かって銃を乱射する事件が発生し、男性6名が死亡しました。

2017年9月30日、ISILに同調するソマリア系難民の男が、アルバータ州エドモントン市内に所在するフットボールスタジアムで、試合の警戒に従事していた警察官を車両ではねた後、ナイフで数か所刺して負傷させる事件が発生しました。犯人は現場からの逃走中、さらに付近道路を通行中の歩行者4名をはねた後、逮捕されました。

日本人・日本権益に対する脅威

現在までのところ、カナダ国内の日本人や日本権益に対する具体的な脅威情報はありません。

他方、近年、シリア、チュニジアおよびバングラデシュにおいて日本人が殺害されたテロ事件や、米国、英国、フランス、ドイツ、ベルギー、トルコ、インドネシア、フィリピン等、日本人の渡航者が多い国でもテロ事件が多数発生しています。このように、世界の様々な地域でイスラム過激派組織によるテロがみられるほか、これらの主張に影響を受けた者による一匹狼(ローンウルフ)型等のテロが発生しており、日本人・日本権益が標的となり、テロを含む様々な事件の被害に遭うおそれもあります。

このような情勢を十分に認識して、誘拐、脅迫、テロ等に遭わないよう、また、巻き込まれることがないよう、海外安全情報および報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め、日頃から危機管理意識を持つとともに、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

誘拐について

カナダでは、近年、年間約400件の誘拐事件が発生していますが、テロリストや犯罪組織による誘拐事件あるいは政治的背景のある誘拐事件は把握されていません。

その他一般犯罪の発生状況

カナダは、一般的に治安が良いといわれていますが、犯罪発生率(人口10万人当たりの犯罪認知件数)は日本の約5倍の水準となっています。最近では、ギャング絡みの発砲・暴力事件も発生しているほか、夜間に銃器や刃物で通行人を脅したり、背後から襲い暴行を加えた後に所持品を奪うといった事案も発生しています。特に、都市部で夜間にひと気のない場所に出かける際は注意が必要です。日本人の渡航者、滞在者が犯罪に巻き込まれる事案も発生していますので、防犯対策は日本にいるとき以上に注意が必要です。

空港やホテル、レストラン等で旅行者を狙ったスリや置引き等が多発しているため、パスポートや現金など貴重品を盗まれないよう注意する必要があります。被害に遭った日本人旅行者の多くが、貴重品を入れたバッグをほんのわずかの時間、足元や近くの椅子のうえに置いた隙に盗まれています。荷物は常に視界に入る位置に置くよう心掛けるとともに、貴重品は必ず身につけて携行するようにしてください。

カナダでは、米国ほど銃器の所持が自由ではありませんが、米国と国境を接しているため、銃の密輸が後を絶たず、銃器を使用した強盗等も散見され、増加傾向にあります。在留邦人が銃器で脅された被害も発生していますので、万一、強盗等の犯人に遭遇した場合には、相手が銃器を所持している可能性が十分にあることを念頭に、身体の安全を第一に考え、絶対に抵抗はせず、立ち去らせた方が無難です。

防犯対策

夜間の一人歩きは避ける

暗く、人通りの少ない場所は避け、街灯がありひと気のある場所を選んで通る。

多額の現金や貴重品は必要な時以外は携行しない

日本人を含むアジア系観光客から盗んだ財布やバッグに多額の現金が入っていたことに味をしめた窃盗グループが、日本人旅行者を専門に狙っている可能性があります。日本人を狙ったこのような窃盗犯罪を撲滅するためにも、多額の現金や貴重品の携行は極力避けることが肝要です。(カナダでは、少額でもカード決済が普及しています。)
また、万一被害にあった時に備えて、現金や貴重品は分散して所持するようお勧めします。

パスポートの取扱いに注意を払う

日本人のパスポートを狙ったパスポート専門の窃盗グループが存在し、現金等貴重品とともにパスポートも盗まれる被害が多発しています。パスポートを携行する際、脱いでいる上着のポケット等に入れたままにせず、必ず身に付けて携行するよう、特に注意が必要です。

犯罪者に隙をみせない。犯罪を誘発しない

犯罪者はまず、多額の現金や貴重品を所持しているターゲットを物色し、そのターゲットの隙を狙います。財布の中身や貴重品を携行していることを他人に知られないように留意することが必要です。また、ひったくりされにくい荷物の持ち方等で犯罪を警戒していることを示すことによって、被害に遭う確率を低くすることができます。

面識のない人を安易に信用しない

カナダの国民性は、一般的に親切ですが、知り合ったばかりの人の家へ安易に行ったり、自動車に同乗したりしないことが賢明です。

車を利用する際も盗難に注意する

車の鍵のこじ開けは、犯人にとって容易なことなので、ハンドルロック棒等を利用し、盗難防止措置を施していることをアピールすることも必要です。また、駐車する際は割高でも人目のある駐車場を利用することが大切です。記念写真の撮影等でほんの数分でも、車中に貴重品は残さないようにしてください。

万一犯罪に巻き込まれた場合には、すぐに警察に届けてください。電話による緊急連絡は911へ。バンクーバー市警においては「Japanese Please」と言えば、日本語でも対応してくれます。
都市別の状況は次のとおりです。なお、都市部の治安問題等には共通する部分も多いので、実際に訪問される都市以外の状況にもご留意ください。

都市別の犯罪事例

オタワ

日本人が被害に遭いやすいのは、空港、ホテル、レストランやバイワードマーケット(Byward Market)周辺観光スポット等における置引きやスリ等の窃盗犯罪です。また、スレーターストリート(Slater Street)近辺のオフィス街やその周辺では、人通りの少なくなる夜間にコンビニエンス・ストアやガソリンスタンドでの強盗事件が発生していますので、夜間に一人で外出する際には、街灯が多く、人通りのある場所を歩くといった注意が必要です。

バイワードマーケット東側地区のジョージストリート(George Street)に所在する、ホームレスを収容するシェルター「ブースセンター」(Booth Centre)周辺の治安状況は悪いため、昼夜を問わず近づかないようにしてください。
バイワードマーケット地区は、レストラン、バー、ナイトクラブ等が建ち並び、観光客も多く訪れる賑やかな地区ですが、最近ではギャング絡みの発砲・暴力事件等も発生しています。多くは、週末の夜中から朝方にかけて発生しており、深夜の無用な外出を控えることをお勧めします。また、駐車中の自動車のガラスを割られ、車内に置いていた物品を盗まれたり、留守中の住居で金品が盗まれる等の被害も発生していますので、貴重品は人目の付く場所には残さない・置かないなどの注意が必要です。

カルガリー、エドモントン、バンフ、ジャスパー

アルバータ州(前年比+18%)、北西準州(前年比+10%)、サスカチュワン州(前年比+10%)の犯罪率は増加傾向にあります。原油価格下落に伴う失業者が目立ち、カルガリー市では、車上荒らしや不法侵入事案が、前年に比べ約50%増加しています。カルガリー市警は、事件性のないものも含め年間約3千人の行方不明者が発生していると発表しています。
バンフやジャスパー等の観光地や、移動中の飛行機内で、パスポートを紛失するケースが増えていますので注意してください。

トレッキング、ハイキング、スキーやスノーボード等が盛んですが、山間部は天候が変わりやすく、無理な移動は事故につながるので、計画的な移動をお勧めします。また、山火事が通年発生しており、州政府による移動・滞在制限等が予告なく行われることがあるので、留意してください。

トロント

旅行者や留学生等を狙った窃盗犯罪が多発しています。被害はホテルのロビーおよびカウンター、レストラン、空港カウンター等で発生しており、ホテルや空港のトイレの個室の物掛けに掛けた荷物を、扉の外から盗まれた例もあります。レストランおよびナイトクラブ等で、パスポートを身分証明書として携行し、その際に紛失する事例も多く見られます。

なお、麻薬取引やギャング同士の抗争等、銃器を使用した殺人事件等が増加しています。こうしたことに巻き込まれない様、普段から周囲に気を配ってください。なお、日本食レストランの日本人従業員が夜遅くに帰宅する際に、刃物や銃器を所持した強盗に遭うケースも増加しています。夜間のひと気のない場所での通行は極力控え、また、万一襲われた時は抵抗しないことをお勧めします。
また、トロントの一部(ダウンタウン東地区、フィンチ通り西側等)は、麻薬中毒者や浮浪者等が多く、治安が悪い場所もあるので注意が必要です。

バンクーバー

旅行者や留学生を狙った置き引き等の窃盗犯罪が、空港、ホテル・ロビー、レストラン、ショッピングセンター、観光地のほか、図書館やカフェでも多発しています。また、最も多発している窃盗犯罪は、観光地等で駐車している車の窓ガラスを割り、車内から物を盗むという手口です。このため、駐車する際は、人目のある駐車場を選び、かつ車内には何も残さないようにしてください。

レンタカーを借りる際に金額未記入のクレジットカードの伝票にサインさせられて、後で多額の請求書が送られる等の被害が発生しています。

麻薬取引やギャング同士の抗争等、銃器を使用した殺人事件等が増加しています。こうした抗争に巻き込まれないよう注意してください。また、夜間のスカイトレイン駅の周辺などで不意に襲われ所持品を奪われたり、銃器や刃物で脅され所持品を盗まれるといった強盗事案が発生しています。夜間のひと気のない場所への外出は極力控え、また、多額の現金や貴重品の携行は極力避けるとともに、万一襲われた時は抵抗しないことをお勧めします。
また、バンクーバーの一部(ダウンタウン東地区、中華街近辺等)は、麻薬中毒者や浮浪者等がたむろしているため治安が悪く、注意が必要です。特別な用事のない限り、このような治安の悪い地区には立ち入らないでください。

2016年には日本人女性が殺害される痛ましい事件が発生するなど、とりわけ凶悪事件の発生率は日本と比較して依然として高い状態にあります。

モントリオール、ケベック市

レストランおよびバーでの食事の際やイベント会場において、床のうえ、椅子の背もたれや椅子の下に置いたカバンを盗まれる、または、カバンから貴重品を抜き取られる等の被害が多く発生しています。特に、アルコールを飲みながら仲間と会話に盛り上がっていたり、子どもの面倒を見たり、ビュッフェで料理を取るために席を立った隙や、パソコン・携帯電話の操作中など荷物から注意がそれる時が狙われます。また、人通りの少ない場所で路上駐車をする際に車の外から見えるところに荷物を置くと、車上狙いや車両盗難に遭いやすいので危険です。最近は、レンタカーや、州外・海外からきた車両が狙われやすい傾向があります。さらに空き巣狙いも多く発生しています。

治安当局では、宗教・思想などによる過激化問題を最優先課題と捉え、カナダ連邦警察、州警察および自治体警察が連携し学校施設や各種民族・宗教コミュニティーとの協力関係を通じて、対策に注力しています。モントリオールには、北米最大の「暴力につながる過激化防止センター」が設立されました。(2015年3月)

不測の事態が発⽣したときには、家族等の依頼を受け⼤使館より安否確認の連絡をする場合がありますので、滞在先等は必ず家族に連絡しておく等、常に所在を明確にしておくようにしてください。
⾮常事態が発⽣したと思われるような場合や、外出中に不測の事態に遭遇した場合は、⾃宅か職場等の安全な場所に戻り、事態が静まるまで待機してください。また、必ず⽇本国⼤使館に連絡してください。

緊急時の連絡先

安全のために、普段から予防対策を心掛けておくことが重要ですが、いざ事が起こったときのことを想定して、その時に被害を最小限にするための対策を講じておくことも大切です。緊急連絡先はメモしておき、家族それぞれが持つような努力が必要です。

警察・消防・救急

  • 警察:TEL 911
  • 消防署:TEL 911
  • 救急⾞:TEL 911

病院

緊急外来、予約受診にかかわらず、身分証明書、旅行傷害保険書類などは忘れずに持参してください。ウォークインクリニック受診に予約の必要はありません。総合病院(公立)は家庭医からの紹介状が必要ですが、救急外来(ER)は予約無しに受診可能です。家庭医、プライベートクリニック(病院)に関しては、ほとんどが予約制、あるいは登録制ですので、必ず事前にご確認のうえ、受診してください。

  • 出典:
    損保ジャパン・SOMPOリスクマネジメント『海外生活を安全におくるために June2018』
    ジェイアイ傷害火災保険株式会社 『海外での医療事情』

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