渡航のテクニック

【海外療養費制度】海外で支払った医療費の公的保障

海外へ渡航される際、多くの方が海外旅行保険に加入されると思います。なぜなら、日本の公的医療保険は海外で利用することができないからです。
日本では病院の治療を受けるときに保険証を提示すれば、通常自己負担額は3割で済みます。しかし、日本の公的医療保険が利用できない海外では、全額自己負担になるため、支払う医療費が高額になってしまいます。
そのため、万が一、海外で病院に行かなければならなくなったときに備え、海外旅行保険への加入をすすめられています。
では、海外旅行保険に加入しないで病院にかかった際、医療費用の補助は何もないのでしょうか。

■もくじ(ページ内リンク)

海外療養費制度とは

支給対象の範囲

支給金額

申請方法

支給時期

海外の治療費について

海外療養費制度とは

何事もなく無事に帰国できることが一番ですが、海外旅行中に慣れない環境から体調を崩したり、ケガをしたりすることもあります。
海外でかかった医療費は、全額ご自身で支払わなくてはなりません。病院へ行くと、診察だけでも高額な医療費を請求されてしまうことがあります。思わぬアクシデントにより、予想外の出費があると困ってしまいますよね。こういった、急な病気やケガで病院にかかったときに利用できるのが海外療養費制度です。
日本では医療費の負担を軽減する制度があり、海外療養費制度はそのうちの一つです。この制度は、渡航中の病気やけがなどにより海外の医療機関で治療を受けた際、申請すると支払った医療費の一部が払い戻されます。
しかし、海外療養費制度は利用条件がありますので、全ての治療が対象となるわけではありません。一定の条件を満たさないと、適用になりませんので注意が必要です。

支給対象の範囲

■日本国内で健康保険が適用される治療であること
保険診療外となる治療を海外で受けた場合、給付の対象とはなりません。日本では認められていない医療行為や、日本で先進医療と指定されている医療行為は海外療養費の支給対象にはなりません。
■治療を目的として海外へ渡航した場合
臓器移植などの医療行為を受ける目的で、海外へ渡航する場合は給付の対象となりません。
その他にも、差額ベッド代や美容整形手術、性転換手術、高価な歯科材料や歯列矯正なども対象外です。

支給金額

日本国内で同様の病気やケガをして、その医療行為を受けた場合にかかる治療費を基準として計算した額から、自己負担相当額(通常3割負担)を差し引いた金額が支給されます。
少し分かりづらいので、例を使って説明しますね。

例.
海外の窓口で実際に支払った医療費…200万円
日本国内で同様の治療をした場合にかかる予想金額…150万円
公的医療保険の自己負担割合…3割負担(45万円)の方

日本でかかると予想される金額-自己負担相当額=海外療養費の返還金額

150万円-45万円=105万円
例の場合だと105万円が海外療養費として返還されます。しかし、実際に支払った額は200万円ですので、実質治療費用が95万円かかっていることになります。
前述している通り、海外で受けた治療と同様の治療を、日本で行った場合にかかる予想金額の7割が返還されるため、治療を受ける国によってご自身の負担額が異なります。
医療水準に比例して医療費も高くなりますので、先進国のような医療水準の高い国で治療を受けた場合は、自己負担額が多くなってしまいます。
また、医療費を外貨で支払った場合、為替レートで円に換算することになります。換算レートは支給決定日のレートを使用するため、返還金額は前後することが考えられます。

申請方法

海外療養費の申請方法は、帰国してからご自身の加入している公的医療保険(国民健康保険や全国健康保険協会など)に申請の手続きをします。
申請手続きは帰国後に行いますが、医師に記入してもらう必要のある診療内容証明書などの書類もあります。帰国後に郵送のやり取りをすると、時間もお金もかかってしまいますので、海外へ渡航される際は、事前に必要書類を用意しておきましょう。
海外療養費の申請用紙は各ホームページから入手することができますので、申請用紙にしたがって必要事項に記入し、指定の宛先へ郵送します。
また、申請書のほかにも診療内容の明細書や領収書、日本語訳文、パスポートの写しなど、添付書類が必要となります。
必要書類はご自身が加入している公的保険によって多少異なりますので、事前に確認しておきましょう。

支給時期

海外療養費は申請してからすぐに支給されるものではありません。一般的に2~3ヶ月程度かかることが多いです。ただし、審査をするため内容によっては3ヶ月以上かかる場合もあります。
また、今まで海外療養費制度を知らなかったという方でも、2年間の時効があります。海外で治療費の支払いをしてから2年以内であれば、申請することができますので、海外で治療を受けたことのある方は領収書など探されてみてはいかがでしょうか。

海外療養費は海外旅行保険との併用もできます。領収書などは海外旅行保険の保険金請求時にも必要となりますが、保険会社へその旨を伝えると、原本でなくても可能な場合もあります。

このように、海外療療養費制度を利用すると自己負担額を軽減することができます。海外旅行保険に加入している方でも、海外療養費制度のことはぜひとも知っておきたいですね。申請条件はありますが、高額になりがちな海外の医療費を補助してくれる制度があるのは、とても助かりますよね。
しかし、海外療養費は帰国後の申請になるため、医療費の支払いはご自身で支払わなくてはなりません。一時的にしても、支払いが高額な傾向にある医療費をご自身で支払うというのは、とても不安ですよね。

海外の治療費について

海外では、保険に加入していないと支払い能力が証明できないため、診療してもらえない地域もあります。
前述している通り、日本は国民皆保険制度ですので、保険証を持参すれば医療費の大部分を国が負担してくれます。そのため、私たち国民は日本で治療を受けても、実際に支払う医療費は一部分のみで済んでいます。
しかし、このような制度の国は少なく、海外では当然日本の医療制度を利用できません。そうなると、保険に加入していない方は全額ご自身の負担になってしまいますね。
では、海外で治療を受けるとどのくらいのお金がかかるのでしょう。高額な保険金の支払い例のページを確認すると、イタリアに渡航中、転倒して足の骨を折ってしまった方が治療費用だけで350万円の保険金給付を受けています。
地域によって医療費に差はありますが、骨折でこれほど高額になるとは想像もしませんよね。海外旅行保険では、キャッシュレスメディカルサービスを利用することができますので、医療費をご自身で立て替える必要がありません。このサービスだけでもメリットは大きいですが、各保険会社では24時間日本語対応ができるサポートデスクを用意しています。
何かトラブルが起きた際はサポートデスクに連絡すると、病院の手配や通訳などを利用できますので、安心して医療機関を受診していただけます。
ご自身や大切なご家族さまのためにも、もしもの時のお守りとして、海外旅行保険に加入し、公的な制度の知識を身につけておくことが大切ですね。
海外旅行保険をご検討の方は海外旅行保険比較サイト「i保険」をご覧ください。

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この記事を書いた人

伊藤菜央(株式会社アイ・エフ・クリエイト 保険コンサルタント) 2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)