渡航のテクニック
海外旅行 テロ対策と旅行先選び|海外旅行保険のいろは
近年、世界中でテロが多く発生しています。テロとは、自分たちの目的を達成するために、民間人を巻き込んで武力行為を働くことを言います。日本でテロという言葉が根付いたのは、アメリカの同時多発テロ事件からだと思います。
テロはいつどこで発生するか分からず、楽しい海外旅行先で起こってしまう可能性もゼロとは言えません。現に、テロが原因でツアーを中止にしたり、旅行の予約を無料キャンセルする旅行会社もありました。ここでは、テロの脅威と身を守るための対策について考えていきたいと思います。
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最近の大きなテロ事件
最近起きた大きなテロ事件のひとつに2015年11月に起きたフランスでの同時多発テロ事件があります。フランスのテロでは、サッカー場やコンサートホールなどが標的とされ、民間の人が被害に遭いました。この影響を受けて、日本の多くの旅行会社は予定していたツアーの催行中止やキャンセル料の無料化などを実施しました。
その後、2016年3月にはベルギーでテロ事件が起こっています。ベルギーのテロでは、空港や地下鉄の駅での爆発事件が起こり、空港の業務が停止するなどたくさんの人に混乱をもたらす事態となりました。
また、2023年10月からのイスラエル軍とパレスチナ武装勢力間の衝突を受け、イスラム過激派組織は機関誌や声明等で、イスラエル関連や西側諸国関連の施設、宗教施設、ナイトクラブ等を標的にするよう繰り返し呼びかけており、注意が必要です。
このように、テロは世界各国でいつどのような状況で発生するか分かりません。テロに巻き込まれないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか。
海外でのテロ対策
渡航する前に旅行先の地域のテロ危険性はどのくらいなのか確認しておくことが大切です。外務省の海外安全ホームページで地域ごとの安全レベルを確認することができます。旅行先として、テロの危険性が高い地域を避けることは、事前対策として効果的です。
また、外務省が運営している「たびレジ」といわれるサービスがあります。これは、テロやクーデター、自然災害など身に危険が及ぶ事件が起こった時に登録したメールアドレスにいち早く情報を提供してくれるサービスです。海外旅行中は、現地の最新ニュースを入手しにくい状況にありますが、たびレジに登録していれば、万が一の場合に危機回避をすることができるため、渡航前に登録しておくことをオススメします。また、日本にいる家族や友人と情報を共有し、いざという時に連絡を取れるようにしておくことも大切です。
テロに巻き込まれないよう自分の身を守るための対策としては、人が集まる場所にはなるべく行かず、目立つ服装は避けるということです。目立つ服装や言葉の入った洋服は、デザイン感覚であっても、海外では「メッセージ」として受け取られてしまうことがあります。
また、建物が壊されてしまった時のために、ガラスの多い建物には近づかず、水とライトは携帯しておくなどの対策もあります。事件現場に居合わせた場合には、なるべく迅速にその場から離れ、大使館に連絡をすることが大切です。
テロの危険性が高い国
中東諸国ではテロの発生確率が高いと言われています。それに次いで、テロが多く発生するのは、イスラム教徒の移民が多い国です。アメリカやイギリス、フランス、イタリア、ドイツなどが標的になりやすいと言われています。しかし、イスラム教徒だからテロを起こすというわけではありません。
イスラム教の聖典であるコーランには「罪のない人を殺す者は全人類を殺したのと同じ」との一節があるほど、過激派組織イスラム国とイスラム教徒は別物であると言えます。
日本のテロ対策
日本ではテロリストの脅威を実感する事件の発生率が少ないせいか、世界的に見てテロ対策が希薄であると言われています。今のところ、テロが起こる危険性は低いとされていますが、2025年の大阪・関西万博や東京で行われる世界陸上を控え、日本もテロの標的になる可能性は十分にあると考えられます。
海外から日本へ旅行に来た人は日本のゴミ箱の多さと形状に驚くと言います。なぜなら、外国では、爆発物などを入れられた時に備えて、ゴミ箱はなるべく人通りの少ないところに設置し、爆発しても被害が最小限で済む素材や形状で作られています。
しかし、日本のゴミ箱は、不審物を入れられた時に分かりやすいようにと透明で中身が見えるようになってはいますが、地下鉄の駅のホームなど人通りが多い場所にに設置されています。
また、コインロッカーについても海外とのテロ対策の違いが顕著に表れます。日本では、コインロッカーは駅の改札の側など人通りが多い場所に数多く設置されています。
しかし、海外では、コインロッカーは不審物を入れられる可能性が高いため、なるべく数は少なく、駅でも改札のさらに下のコインロッカー専用フロアに設置されています。これらのことからも、日本はテロに関する危機管理が薄いと言えます。
世界に脅威をもたらしているテロ組織
日本でニュースを見ていると、テロに関する事件はほとんどイスラム教というイメージで、組織の区別がつきにくいのが現状ではないでしょうか。ニュースをもとに、海外旅行前から危機管理をするため、日本の公安調査庁によって、危険だとされているテロ組織をいくつか紹介したいと思います。
「アルカイダ」は、アフガニスタンやパキスタンを中心に活動しているテロ組織です。アメリカ同時多発テロ事件を首謀したことでも有名です。「イスラム国」は、占有地で産出される石油や誘拐した人質の身代金を資金源とし、世界で脅威をふるっており、イラクやシリアを中心に活動しています。インターネットを利用し、人質を処刑する映像を配信するなど、情報戦も駆使しています。
「ヒズボラ」はレバノンを中心に活動しており、イスラム国に敵対する組織と言われています。「クルド労働党」は、トルコを中心に活動しており、トルコ経済に打撃を与えることを目的に外国人観光客を標的にして自爆テロを行っているため、注意が必要です。
このように、テロ組織も様々な形があり、国や組織によって違うことが分かります。どの組織がどの地域でテロを起こしたのかをニュースで確認し、その付近への渡航は避けるなどの対策が必要です。
海外旅行保険はテロも補償してくれるか
海外旅行における様々なトラブルを補償してくれる海外旅行保険ですが、戦争などの変乱は補償対象外となることが一般的です。しかし、アメリカ同時多発テロ以降、日本でのテロに関する認識が変わり、多くの場合、テロに巻き込まれた場合の現地での治療費などは補償対象になります。
しかし、注意すべき点としては、万が一、自身が誘拐された場合などの身代金は補償されないことが多いため、なるべくテロに巻き込まれないようにすることと、目立った行動はせず、標的にされないよう注意することが大切です。海外では誘拐保険というものがある国もありますが、日本では販売されていないのが現状です。
クレジットカードに付帯されている海外旅行傷害保険でもテロ被害の補償があるものが一般的です。海外旅行前には、渡航先のテロ危険度と海外旅行保険の補償内容を確認することを忘れないようにしましょう。
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この記事を書いた人
伊藤菜央(株式会社アイ・エフ・クリエイト 保険コンサルタント) 2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)