渡航のテクニック
【妊婦の海外旅行】必ずチェックしたい注意点と海外旅行保険について
近年、妊娠中に旅行に行くマタニティー旅行が話題になっています。妊娠に気づかず、旅行の予約をしてしまった場合や、赤ちゃんが産まれる前に旦那さんと2人で旅行に行きたいと思う人も多く、マタニティー旅行の需要が増加していると言われています。しかし、妊婦さんが海外旅行へ行くには、飛行機に乗ったり、慣れない土地での食事をすることなどを考えると、不安に思われる方も多いかもしれません。妊娠中の旅行で注意すべき点にはどんなことがあるのでしょうか。
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妊娠初期の注意点
妊娠初期の海外旅行は、一般的に避けたほうがいいと言われています。なぜなら、海外旅行に行く際には飛行機に乗る必要があり、母体にも胎児にも危険な点が多くあるからです。妊娠初期の女性の体は不安定になりやすい状況にあり、飛行機の離着陸時の気圧の変化や酸素濃度の低下などにより、貧血や頭痛などの症状が出たり、つわりがひどくなる場合もあります。妊娠初期には血流が悪くなりやすく、血栓ができ、エコノミークラス症候群なども発症しやすくなります。
飛行機に乗ると搭乗検査や雲の上に出た時の放射線を浴びるという点について心配される方もいますが、母体に影響が出るほどの放射線量ではないとされています。しかし、胎児は細胞分裂のスピードが速いため、母体には問題ない放射線量でも胎児には影響を与える可能性もあるという指摘がされていることもあります。
やむを得ず、妊娠初期に飛行機に乗る必要がある場合には、必ず保険証と母子手帳を持参するようにしましょう。また、航空会社に事前に申請をし、トイレに行きやすく、なるべく通路側の席を取るようにし、長時間同じ姿勢にならないように手足をこまめに動かすなど注意することが必要です。万が一の場合に備え、渡航前にかかりつけの病院で相談をし、英文での診断書を書いてもらっておくと安心だと思います。
妊娠中の旅行に適しているのは
妊娠中の旅行に適しているのは妊娠12週~27週の安定期に入ってからと言われています。また、なるべく時差の少ない国を選び、身体に負担のかからないゆったりとした計画を立てましょう。
しかし、健康な妊婦さんであっても、妊娠中の海外旅行は妊娠周期に関わらず、リスクがあるとされています。一般的に安定期とは、流産しないと言う意味ではなく、胎盤が完成し、つわりが落ち着いてくる時期とされているので、飛行機の離着陸時の急激な気圧の変化でお腹が張ってしまうこともあります。それに加え、海外旅行先で早産や流産などが起こり、病院にかかる場合には高額な治療費がかかるので、注意が必要です。
飛行機に乗るときに注意すること
飛行機に乗る際には、腸内のガスが膨張しやすいので、炭酸飲料を飲むことは避けたほうがいいと言われています。また、機内は乾燥していて、密閉された空間なので、感染症の確率も高いとされています。乾燥対策や感染症予防のためにもマスクを着用することをオススメします。しかし、飛行機の中は酸素濃度が薄くなりやすく、母体が息苦しくなると胎児も酸素不足になり、先天性異常のリスクも高まりますので、注意が必要です。また、おなかをベルトで締め付けることはよくないとされているため、事前に延長ベルトを頼んだり、エコノミークラス症候群になることを防ぐため、座席の前に広いスペースがあるバルクヘッド席を予約しておく方法もあります。前もって航空会社に妊娠していることを申告しておくと、マタニティータグをもらえます。それを身につけておくと、添乗員の方が気にかけてくれたり、荷物の上げ下ろしを手伝ってくれたりします。
エコノミークラス症候群とは、深部静脈血栓症ともいい、水分不足などで血液がドロドロになり、血の流れが悪くなってしまうことから起こります。胎児に栄養が行き届かなくなる可能性も高いので、こまめに水分を摂ることや、足を動かすなど対策する必要があります。また、弾性ストッキングを着用することもエコノミークラス症候群の予防に効果的であると言われています。
旅行先での注意点
海外では日本と違い、生水でお腹を壊すことが多くあります。妊娠中は免疫力が下がっているため、食中毒などにもかかりやすくなります。食中毒になると、下痢や嘔吐、発熱や頭痛などを引き起こし、胎児に悪影響を与えるので注意が必要です。妊娠中に特に注意する必要がある食中毒の原因菌にリステリア菌、カンピロバクター、ノロウィルス、トキソプラズマなどがあります。リステリア菌は生肉や生魚、加熱処理されていないチーズなどに含まれており、感染すると早産や死産につながる可能性があります。カンピロバクターは、生肉や飲料水に生息している細菌で、感染すると胎児の髄膜炎を引き起こすと言われています。ノロウィルスはカキなどの貝類に生息し、感染すると激しい下痢と嘔吐に見舞われます。直接胎児に影響を与えることは少ないとされていますが、水分不足や栄養不足は胎児に悪影響になりますので、注意が必要です。トキソプラズマは寄生虫で、生肉や魚介類、生野菜などに生息しているとされていますが、健康な人が感染してもほとんど問題は起こりません。しかし、妊娠中に感染すると胎児が水頭症や網膜炎になってしまうリスクがあります。
食中毒を予防するためには、旅行先で生ものを食べることは避けるということです。しっかり火を通すことで、食中毒になる確率を下げることができますので、飲食物にはしっかり火を通してから口に入れるようにしましょう。
旅行先で出産することになったら
日本で出産する場合には、妊娠初期は2週間に1回程度、安定期に入ってからは1ヶ月に1回程度、妊娠後期は2週間に1回程度、臨月に入ると毎週というように定期健診を受けることが一般的です。しかし、海外の場合、医療費が高く、アメリカなどでは妊婦健診を受けない人も多いとのことです。このことからも、万が一、海外で出産することになった場合や早産などで病院にかかった場合には高額な治療費がかかることが予想されます。日本でかかる出産費用の平均が60万円前後であるのに対し、アメリカで出産するのに必要な費用は200万円前後かかるとも言われています。また、日本では出産後1週間程度入院するのに対し、海外では、自然分娩の場合は1日で退院となり、帝王切開の場合も2日程度で退院させられてしまうことが多いです。その分、痛み止めなどの薬が多く処方されることが一般的です。海外の高額な医療費に備えて海外旅行保険に加入しておくことをオススメします。
妊娠中の海外旅行保険
妊娠中でも海外旅行保険に加入することができます。しかし、ほとんどの場合、妊娠、出産、早産、流産、死産などに関する費用は補償されないことがほとんどです。まれに妊娠初期の異常による治療が必要になった場合など、滞在期間によっては条件付きで補償してくれる保険もありますので、補償内容を確認して加入しておくと安心だと思います。
海外旅行保険の加入を検討されている方は海外旅行保険比較サイト「i保険」短期渡航ページをご覧ください。
また、日本の健康保険に加入していれば、海外でかかった出産費用の一部を海外療養費として出産育児一時金の申請することができます。海外での出産の場合は、自治体によりますが、40万円前後の費用が支給されます。海外療養費支給申請をするためには、海外でかかった病院で出生証明書、診療内容明細書、領収明細書等を書いてもらう必要があります。日本語訳が必要になる可能性がありますので、妊娠中の方は事前に確認しておく必要があります。しかし、出産育児一時金がおりるとはいえ、海外で出産する際にかかる高額な医療費を考えると、それはほんの一部に過ぎません。妊娠中の海外旅行は、それだけのリスクがあることを踏まえながら、万全の対策をして行く必要があります。
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この記事を書いた人
伊藤菜央(株式会社アイ・エフ・クリエイト 保険コンサルタント) 2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)